保護ほご者しゃによる宗教しゅうきょうの信仰しんこうを背景はいけいにした児童じどう虐待ぎゃくたいの実態じったいを把握はあくするため、こども家庭かてい庁ちょうは昨年度さくねんど、全国ぜんこくの児童じどう相談そうだん所しょや学校がっこうなどを対象たいしょうに初はじめて調査ちょうさを行おこない、26日にち、結果けっかを公表こうひょうしました。

それによりますと、全国ぜんこくの児童じどう相談そうだん所しょのうち、およそ16％に当にあたる37か所かしょがおととし4月つきから去年きょねん9月つきまでの1年ねん半はんの間まに、虐待ぎゃくたいに当あたる事例じれいがあったと回答かいとうしました。

虐待ぎゃくたいと判断はんだんした事例じれいはあわせて47件けんに上のぼり、このうち4割わりに当にあたる19件けんについて一時いちじ保護ほごを行おこなったということです。

虐待ぎゃくたいの内容ないようは

▽「言葉ことばや映像えいぞう、資料しりょうにより恐怖きょうふをあおる、脅おどす、子こどもの自由じゆうな意思いし決定けっていを阻害そがいする」が最もっとも多おおく

次ついで

▽「他者たしゃの前まえで宗教しゅうきょうを信仰しんこうしていると宣言せんげんすることを強制きょうせいする」や

▽「言葉ことばなどで恐怖きょうふをあおるほか、脅迫きょうはくや拒否きょひ的てきな態度たいどを示しめすなどして宗教しゅうきょう活動かつどうなどを強制きょうせいする」

▽「宗教しゅうきょう活動かつどうの参加さんかなどによりこどもの養育よういくを著いちじるしく怠おこたる」

という事例じれいが多おおかったということです。

このほか

▽「宗教しゅうきょう活動かつどうなどを通つうじた金銭きんせんの使つかい込こみで適切てきせつな住環境じゅうかんきょうや衣服いふく、食事しょくじなどを提供ていきょうしない」や

▽「医療いりょう機関きかんを受診じゅしんさせない、医師いしが必要ひつようと判断はんだんした輸血ゆけつなどの治療ちりょう行為こういを行おこなわせない」

なども目立めだったということです。

また、親おやが宗教しゅうきょうを信仰しんこうしている、いわゆる「宗教しゅうきょう2世せい」28人にんへの聞き取ききとりや書面しょめんでの調査ちょうさでは、おおむね半数はんすうが虐待ぎゃくたいの経験けいけんについて、誰だれにも相談そうだんできなかったなどと回答かいとうしました。

理由りゆうとしては

▽「虐待ぎゃくたいにあたるのかわからなかった」や

▽「誰だれに相談そうだんしてよいかわからなかった」

▽「相談そうだんした後のちに起おこることへの不安ふあんがあった」

などの回答かいとうがあったということです。

このほか、宗教しゅうきょうに関にかんする虐待ぎゃくたいへの対応たいおうをまとめた国くにのガイドラインの認知にんち状況じょうきょうを小中こなか学校がっこうや高校こうこうを対象たいしょうに調査ちょうさしたところ、「内容ないようも含ふくめよく理解りかいしている」と回答かいとうしたのは、いずれも2割わり前後ぜんごにとどまりました。

こども家庭かてい庁ちょうは、今後こんご文部もんぶ科学かがく省しょうなどと連携れんけいし、子こどもが助たすけを求もとめることができる環境かんきょうの整備せいびを進すすめることにしています。

国くにの指針ししんや対応たいおうは

親おやが信仰しんこうしている宗教しゅうきょうなどを背景はいけいにした子こどもへの虐待ぎゃくたいについて厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、おととし12月つき、児童じどう相談そうだん所しょなどが相談そうだんに対応たいおうする際さいの留意りゅうい点てんや具体ぐたい的てきな事例じれいを「Q＆A」形式けいしきでまとめ、全国ぜんこくの自治体じちたいに通知つうちしました。

この中なかでは、虐待ぎゃくたいかどうかを判断はんだんするにあたっては、「子こどもの側がわにたって判断はんだんすることが必要ひつようである」としたうえで、具体ぐたい的てきな事例じれいとして理由りゆうを問とわず

▽児童じどうをたたく

▽むちで打うつなどの

暴行ぼうこうを加くわえることは身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいにあたるとしています。

また

▽「地獄じごくに落おちる」や「滅ほろぼされる」などの言葉ことばを使つかって恐怖きょうふの刷すり込こみを行おこない、宗教しゅうきょう活動かつどうなどへの参加さんかを強制きょうせいすることや

▽子こども本人ほんにんが学校がっこう行事ぎょうじなどに参加さんかすることを希望きぼうしているにもかかわらず参加さんかを制限せいげんする行為こういは

心理しんり的てき虐待ぎゃくたいやネグレクトに該当がいとうするなどとしています。

この「Q＆A」について、文部もんぶ科学かがく省しょうも関係かんけい機関きかんに周知しゅうちし、子こどもからの相談そうだん対応たいおうに当あたるよう呼よびかけていて宗教しゅうきょうに起因きいんする相談そうだんが寄よせられた場合ばあいに報告ほうこくを求もとめています。

それによりますと、昨年度さくねんどまでの2年間ねんかんに寄よせられた宗教しゅうきょうが起因きいんする相談そうだんは

▽スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが受け付うけつけた相談そうだんが24件けん

▽「24時間じかん子こどもSOSダイヤル」で受け付うけつけた相談そうだんが13件けんで

合あわせて37件けんだったということです。

専門せんもん家か「相談そうだんに乗のると積極せっきょく的てきに伝つたえていく必要ひつようがある」

こども家庭かてい庁ちょうの調査ちょうさで検討けんとう委員いいん会かいのメンバーも務つとめた立正大学りっしょうだいがくの西田にしだ公昭きみあき教授きょうじゅは、親おやの宗教しゅうきょうへの信仰しんこうを背景はいけいとする虐待ぎゃくたいについて「身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいだけでなく心理しんり的てき虐待ぎゃくたいも見みえにくいものの、心こころの成長せいちょうに深刻しんこくな影響えいきょうを与あたえる。親おやの宗教しゅうきょうや思想しそうに従にしたがって常つねに生活せいかつが制限せいげんされることで、友達ともだちとの関係かんけいや職場しょくばでの関係かんけい構築こうちくが難むずかしくなり、『どう生いきていけばいいか分わからない』という声こえも上あがっている」と指摘してきしました。

そのうえで、今後こんごの課題かだいについて「国くにがおととし、宗教しゅうきょうに関連かんれんした虐待ぎゃくたいの具体ぐたい的てきな事例じれいなどをまとめた通知つうちを出だしたが、今回こんかいの調査ちょうさでは児童じどう相談そうだん所しょや学校がっこうなどの現場げんばではどのように対応たいおうすればいいか判断はんだんに迷まよう事例じれいがあり、子こどもも公的こうてきな機関きかんに相談そうだんしにくいと感かんじている実態じったいが明あきらかになった。今後こんご、研修けんしゅうなどを通をつうじて専門せんもん的てきな知識ちしきを深ふかめて相談そうだん機関きかんの底上そこあげを図はかり、子こどもたちに対にたいして、相談そうだんに乗のるよということを積極せっきょく的てきに伝つたえていく必要ひつようがある」と話はなしていました。

加藤かとうこども政策せいさく相しょう「調査ちょうさ研究けんきゅうの結果けっか踏ふまえ 対応たいおう検討けんとうへ」

加藤かとうこども政策せいさく担当たんとう大臣だいじんは、閣議かくぎのあとの記者きしゃ会見かいけんで「児童じどうへの身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいや心理しんり的てき虐待ぎゃくたいは、宗教しゅうきょうの信仰しんこうを背景はいけいとするものも含ふくめ、その理由りゆうを問とわず許ゆるされるものではない。調査ちょうさ研究けんきゅうの結果けっかも踏ふまえ、今後こんごどのような対応たいおうができるか、さらに検討けんとうしていく」と述のべました。

宗教しゅうきょう2世せい“子こどもが相談そうだんできる環境かんきょうづくりを”

いわゆる「宗教しゅうきょう2世せい」の子こどもたちが相談そうだんしたり助たすけを求もとめたりできる環境かんきょうづくりを進すすめてほしいと訴うったえる当事者とうじしゃもいます。

親おやが宗教しゅうきょうを信仰しんこうしている10代だいの高校生こうこうせいは、幼少ようしょう期きから

▽自分じぶんの意思いしとは関係かんけいなく宗教しゅうきょう団体だんたいが開ひらく集会しゅうかいや布教ふきょう活動かつどうへの参加さんかを強制きょうせいされてきたほか

▽アニメや漫画まんがなどを見みることも一切いっさい禁止きんしされてきたといいます。

こうした行為こういは国くにのガイドラインで心理しんり的てき虐待ぎゃくたいなどに該当がいとうするとされていますが、当時とうじは虐待ぎゃくたいに当あたることは知しらなかったといいます。

その理由りゆうについて高校生こうこうせいは「母はははいつも『宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうといえば世の中よのなかは許ゆるしてくれる』と言いっていたので、相談そうだんもしてはいけないと思おもっていた」と話はなしていました。

その後そのご、進学しんがくのタイミングで宗教しゅうきょう活動かつどうからは距離きょりを置おくことができたことなどから自分じぶん自身じしんが受うけてきた行為こういが虐待ぎゃくたいに当あたるものだとはじめて認識にんしきしたといいます。

高校生こうこうせいは「周まわりの大人おとなは宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうといったとたんに一いち歩ほ引ひいてしまう部分ぶぶんがあったように感かんじたので、子こどもが『宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆう』と言いった場合ばあいでも、近ちかくの大人おとなが踏み込ふみこんで話はなしを聞きき、子こども一いち人にん一いち人にんにあったサポートをしてくれることが大事だいじだと思おもう。学校がっこうで配布はいふされるパンフレットなどを通をとおして宗教しゅうきょう2世せいの存在そんざいや信仰しんこうが強制きょうせいされることは間違まちがいであることを伝つたえたり、子こども向むけのガイドラインを作つくることも必要ひつようだと思おもう」と話はなしていました。

虐待ぎゃくたい受うけてきた女性じょせい「子こどもの気持きもちを第だい一いちに対応たいおうしてほしい」

幼おさない頃ころから自分じぶんの信仰しんこうや意思いしとは関係かんけいなく宗教しゅうきょう活動かつどうを強制きょうせいされるなど児童じどう虐待ぎゃくたいに当あたる行為こういを受うけてきたという女性じょせいは、「子こどもが本当ほんとうはどうしたいのか、子こどもの気持きもちを第だい一いちに対応たいおうしてほしい」と訴うったえています。

親おやや祖母そぼが宗教しゅうきょう団体だんたいの信者しんじゃだという20代だいの女性じょせいは、幼おさないころから宗教しゅうきょう団体だんたいの集あつまりへの参加さんかを強制きょうせいされていたほか、教義きょうぎを理由りゆうに友達ともだちと遊あそぶことや学校がっこう行事ぎょうじへの参加さんかなどを禁きんじられてきたといいます。

母親ははおやが学校がっこうに対にたいして宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうで行事ぎょうじへの参加さんかができないなどと伝つたえていたといい、小学校しょうがっこうで節分せつぶんやクリスマスなどのイベントが行おこなわれる際さいには、保健ほけん室しつや図書としょ室しつで1人にんで過すごしていたということです。

女性じょせいは学校がっこうの行事ぎょうじに参加さんかしたいという思おもいがありましたが、担任たんにんの教師きょうしなどから本当ほんとうはどうしたいのか確認かくにんされることはなく、同級生どうきゅうせいに紛まぎれて行事ぎょうじに参加さんかしようとしても制止せいしされたといいます。

国くにのガイドラインでは

▽宗教しゅうきょう活動かつどうなどへの参加さんかを強制きょうせいすることや

▽子こども本人ほんにんが学校がっこう行事ぎょうじなどに参加さんかすることを希望きぼうしているにもかかわらず、参加さんかを制限せいげんする行為こういは

いずれも心理しんり的てき虐待ぎゃくたいやネグレクトに該当がいとうするとしています。

女性じょせいは、当時とうじを振り返ふりかえり「物心ぶっしんがついた時ときから信仰しんこう心しんが芽生めばえたことはありませんでしたが、周まわりの親族しんぞくもみんな信者しんじゃで学校がっこうの先生せんせいも母親ははおやの意見いけんを尊重そんちょうしていたので、宗教しゅうきょうに従したがうしかない人生じんせいなのかなと思おもって生いきてきました。当時とうじは宗教しゅうきょう活動かつどうの強制きょうせいが虐待ぎゃくたいに当あたるとは思おもっておらず、誰だれに相談そうだんしていいかもわかりませんでした」と話はなしていました。

女性じょせいはその後そのご、大学だいがく進学しんがくで親元おやもとを離はなれたことをきかっけに宗教しゅうきょう活動かつどうからは距離きょりを置おき、幼おさないころの記憶きおくは思い出おもいださないようにしていたといいますが、安倍あべ元もと首相しゅしょうが銃撃じゅうげきされた事件じけんを契機けいきに「宗教しゅうきょう2世せい」をめぐる問題もんだいが取り沙汰とりざたされるようになったことで、自分じぶんの経験けいけんが虐待ぎゃくたいに当あたるとわかったといいます。

女性じょせいは、当事者とうじしゃの子こどもが自分じぶんの状況じょうきょうを客観きゃっかん的てきに捉とらえたり、相談そうだんしたりするためには、学校がっこうのかかわりが重要じゅうようになるとしたうえで「子こどもにとっては学校がっこうの先生せんせいが親おや以外いがいで関かかわる身近みぢかな大人おとなだと思おもうので、親おやの話はなしだけを聞きくのではなく、子こどもが本当ほんとうはどうしたいのか本心ほんしんを拾い上ひろいあげて、それを第だい一いちに対応たいおうしてほしい。学校がっこうでの配布はいふ物ぶつで宗教しゅうきょう活動かつどうの強制きょうせいは虐待ぎゃくたいにあたると知しらせることで初はじめて気きづける子こどもも多おおいと思おもうので、子こどもの目めに入はいりやすい形かたちで周知しゅうちしていってほしい」と訴うったえています。